主君・大内義隆を「大寧寺の変」によりクーデターにより廃し、「厳島の戦い」での敗戦により名門・大内氏を滅亡に追いやった陶隆房。後世に伝えられた悪名高き武将としての陶隆房を新解釈で描く物語。

こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!
本記事では吉川永青さん著「悪名残すとも」を紹介させていただきます。
あらすじ
天文九年(1540年)の師走。毛利元就の居城、郡山城に尼子軍の怒濤の侵攻が押し寄せようとした時、一万の兵を率いた援軍が現れた。まだ二十歳の美しき軍師の名は、陶隆房。大内義隆の重臣にして、援軍の大将を務める男だった。隆房の見事な戦略により尼子軍の侵攻を打ち破った隆房は、毛利元就の戦友として、親交を深めていく。だが、隆房の真の敵は、外部だけではなかった。翌年、出雲に侵攻した隆房の軍は、内部の統制も取れずに敗走を余儀なくされる。大内氏内部での文治派の台頭、君主大内義隆の戦離れにより、武断派の隆房は追い詰められることに。さらに大内義隆の文化への傾倒と浪費は、天役(臨時徴税)を連発することになり、領民を苦しめていくのだった。迫り来る隣国の侵攻、疲弊する大内氏を立て直すため、隆房はついに決断を下す。
「悪名残すとも」の見どころ
悪名高き男の姿を新解釈で描いている
歴史の中で敗者とされた者たちは、得てして悪い側面のみをクローズアップされがちです。
例えば、「桶狭間の戦い」で討ち取られた今川義元など。
「海道一の弓取り」と呼ばれ、一時は上洛を目指すほどの軍事力・政治力を持ちながらも、ある一戦で敗北したことから、暗愚な武将との評価が大きく広がっています。
他にも、室町幕府13代将軍足利義輝を手にかけた松永久秀などもそうですが、研究が進むにつれ、実はそうではなかったと評されるようになった人々も、ある汚点により、よろしくない評判を受けることが多いと思います。
(それは仕方ないことだと思いますが、、)
本作品の主人公、陶隆房(のちの晴賢)も同様です。
主君・大内義隆をクーデターにより弑虐し、大内家の実権を掌握。
その後、毛利元就の策に嵌められ、厳島の戦いで敗れて陶隆房自身は死亡、大内家も滅亡の一途を辿ることになる。
下剋上を起こした上に、大事な一戦で討たれて主家を滅亡させた暗愚な武将と語れるケースが多い人物の1人です。
ただし、本作品での描かれ方としては、軍事・政治に優れた大内家No.2としての優れた面も映し出されています。
私個人としては、ある一点だけではなく、通説を覆すような描かれ方をされている作品は好みです。
若干20歳にして大内家の軍事を担う若者としての力量、その後大内家の命運を握る重要人物としての働き、敗戦とはなったが2,3万の兵力を動員した厳島の戦いへ向かうための軍事力・統率力など、暗愚な人物では成し遂げられないことが多々あります。
同じ武将を描きながらも全く違う側面を映し出していただける、それが多くの戦国時代小説を読む面白さだと私は感じています!
そういった意味でも、本作は通説の陶隆房とは違う人物で出会え、とても良い作品でした。
隆房と政敵との手に汗握る戦い
合戦シーンが魅力的な作品は多々ありますが、当作品では武断派である陶隆房率いる派閥と、文治派との政争も見どころの一つです。
戦から離れ、公家の嗜みに耽る主君に取り入る佞臣を取り除かんとすべく戦う姿は必見です。
大内家のためにと、主君を諌める陶隆房ですが、甘い言葉で取り入る佞臣により妨害され、徐々に遠ざけられてしまう。
常に主家を思い行動するも上手くいかない陶隆房の苦悩がリアルに描かれています。
毛利元就との親交
厳島の戦いで陶隆房を討った毛利元就ですが、当作品では、当初は大内家と共闘する盟友として描かれています。
毛利元就は、陶隆房を討ったというイメージが強かったのですが、実質的な大内家の傘下にあった毛利家なので、軍事作戦や外交ではNo.2の陶隆房との交流もあったのだと理解しました。
物語序盤は理想を共に追い求める理解者・盟友ですが、何故厳島の戦いで戦うことになってしまったのか、各々の生き方がうまく対比されており、こちらも見どころの一つです。
本の基本情報


作品名:悪名残すとも
著者:吉川永青
出版社:角川文庫
発売日:2015/12/25
ページ数:373ページ
まとめ
本記事では、吉川永青さん著の「悪名残すとも」を紹介させていただきました。
陶隆房という歴史上に悪名を残しながらも、功績は知られていない武将の新しい姿と出会うことができて、とても良い本出た!!
やはり、通説とは異なったり、マイナーな武将と出会えると嬉しくなりますね!笑
通説とは異なるということで、稀代の悪人と呼ばれた松永久秀や名門今川家を衰退に導いた今川義元など、マイナスなイメージで伝えられてきた武将を新たに描ききる一冊を紹介しておりますので、よろしければ合わせてお読みいただけると嬉しいです!
本記事もお読みいただきありがとうございました!!




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