かつて同じ時を過ごした八人の若者は、各々の思いを胸に戦国の世をひた走る。何故彼は立ち向かったのか、守ろうとしたものとは何か。個性豊かな「賤ヶ岳七本槍」の目から見た石田三成を描く一冊。
本の紹介
こんにちは、時代小説好きのなごむです!
今回は、「八本目の槍(今村翔吾著)」を紹介したいと思います!
2020年5月に発行され、直木賞候補ともなった、「じんかん」の著者でもある今村翔吾さんの作品になります。
※「じんかん」も戦国時代を取り扱った小説で、松永久秀の一生を描いた作品になります。こちらもオススメですので、いずれ書評をお送りしたいと思います!
ところで皆さん、「賤ヶ岳七本槍」はご存知でしょうか?この物語のキーとなるので、以下に簡単にまとめます!
賤ヶ岳七本槍とは
豊臣秀吉と柴田勝家が争った「賤ヶ岳の戦い」で功をあげた若手武将の総称です。
当時豊臣秀吉に小姓組として仕えていた若手武将達は、「賤ヶ岳の戦い」で大きな功をあげ、一軍を率いる将となり、ゆくゆくは豊臣恩顧の大名となっていきます。以下の7名が該当します。
・脇坂安治
・片桐且元
・平野長康
・福島正則
・加藤清正
・糟谷武則
・加藤嘉明
当作品は、1人1人を主役にした全7章から構成されています。皆の若かりし頃、そして運命を大きく変える「関ヶ原の戦い」・「大坂の陣」を中心にして、各々と石田三成との関わりを描く、そんな構成になっております。一章一章が独立しているわけではなく、各章での繋がりがあるので、読み進めていくうちに次が早く読みたくなりました!(加藤清正や、福島正則は非常に有名で各作品でも取り扱われることが多いので、目にしたことがあると思いますが、その他の面々はあまり取り上げられることがない印象です。そういう意味では、珍しい作品となっております。)
昔は共に小姓組として豊臣秀吉に仕え、苦楽を共にした仲間達。「賤ヶ岳の戦い」で戦果をあげた面々は、やがて一軍の将となり、国持の大名として出世していきます。身一つで仕えたかつての小姓組とは異なり、国を家臣を守る責任を背負って、別の道を歩むようになる。そして関ヶ原で散っていく石田三成。彼が抱いていた思いとは、守ろうとしたものとは。賤ヶ岳七本槍の目線から描く、感動的な作品となっております。
■あらすじ
秀吉の配下となった八人の若者。武勲を上げた七人は「賎ケ岳の七本槍」とよばれるようになる。「出世」だけを願う者、「愛」だけを欲する者、「裏切り」だけを求められる者―。己の望みに正直な男たちは、迷いながらも、別々の道を進んだ。残りのひとりは、時代に抗い、関ケ原で散る。この小説を読み終えたとき、その男、石田三成のことを、あなたは好きになるだろう。共に生き、戦った「賎ケ岳の七本槍」だけが知る石田三成の本当の姿。そこに「戦国」の答えがある!
基本情報

■作品名
「八本目の槍」
■著者
今村翔吾
■出版社
新潮社
■発売日
2019/7/18
オススメポイント
① 個性豊かな小姓組のやりとりが面白い!
今回主役となる賤ヶ岳七本槍+石田三成ですが、それぞれが全く異なる特徴的な性格を持って描かれており、そのやりとりが非常に面白いです!熱血漢、武辺一辺倒の福島正則と、冷静沈着、歯に衣着せぬ物言いの石田三成のやりとりなど、目に浮かぶように描かれています。
② 石田三成の人物像に惹かれる!
世間一般の石田三成とは、いかなるものでしょうか?例えば
- 冷徹な官僚肌
文禄・慶長の役では、前線で戦っている武将達の気苦労を顧みず、敗戦も含めたマイナスな事象も含め、事実だけを報告し、武断派(主に戦っていたもの達)からの批判を買った。 - 人望が無い
関ヶ原の戦いでは、結果負けることとなりましたが、大きくは各将による裏切りが原因と考えられています。そのため、裏切られるほど人望が無いのに無茶な戦を挑んだという評判。
その他にも、邪魔な人間を諫言によって排除する(千利休や豊臣秀次)、淀殿と豊臣秀吉の子は実は石田三成との子では、というようなマイナスなイメージで語られることが多いと思います。
ですが、この作品で描かれている石田三成とは、不器用だけど仲間想い、時には激論を交わし拳を交わすこともある、そんな人物像で描かれています。勉強を教える時にも、「何でこんな簡単な問題できないの?」と素直な気持ちを言ってしまいつつも、ちゃんと教えてあげる、そんな人間臭さを感じさせてくれます。
また、この作品を通して語られる「石田三成の抱いた思い」について、ネタバレになってしまうので詳細は記載しませんが、この時代にこんな思いを抱いて行動していたのかと、多くの作品とは異なった、新たな解釈を与えてくれます。何故彼が無謀な戦いを挑んだのか、それはその思いのため、守ろうとしたもののため、と考えると、胸が熱くなります。
③ 新たな視点が多い!
多数戦国時代の本を読んできた私ですが、本作品では新たな視点で見れることが多かったです。前述のものもありますが例えば
- 他作品で語られない面々が取り上げられている
→福島正則など主要どころではなく、脇坂安治などの面々が主役となっている。 - 人物像について新たな解釈で描かれている
→例えば、加藤清正について。彼は比較的、武功によった将として描かれることが多く、私もそのイメージでした。ですが本作品では「戦闘は苦手。将としての才能はなく、官僚としての才に秀でている」という人物像で語れています。 - 石田三成が関ヶ原の戦いを起こした理由
→こちらはこの作品の根幹になりますので、詳細はお読みください!ですが、他では語れることのない視点ですので、一読の価値ありです!
以上などが挙げられます。
個人的には、多くの作品とは異なった視点で描かれている本に出会うと「おお!」と嬉しくなったりするので、そういう意味でもこちらの作品と出会えて本当に良かったと思っています!!
まとめ
今回は今村翔吾さんの「八本目の槍」について書評を書かせていただきました!
個性豊かな面々を主役として、ワクワクする展開がスピーディーに続いていく作品です。新たな目線で語られることが多いので、歴史マニアの方、初心者の方問わずオススメの作品となります!
お読みいただきありがとうございました!これからも本の魅力をお伝えできるように頑張ります!
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