大国大友家の戦神「立花道雪」。圧倒的な武力から鬼と呼ばれた男が歩む壮絶な半生。忠義と愛の狭間で貫く信念を描く、感動的な一冊。
こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!
本記事では、赤神諒さんの「戦神」を紹介させていただきます。
あらすじ
戸次鑑連(後の立花道雪)は、父・親家が主君の怒りを買い、その責を負って切腹し果てた母から生まれた。
新たに主君となった大友義鑑に認められた鑑連は、次々と戦功をあげ、多くの家臣に慕われて、大友最強の将と称えられた。ついには幼馴染で永年想い続けていた重臣入田家の娘・お道と結ばれ、評判のおしどり夫婦となったのだが…。
鬼と呼ばれた男の凄烈な運命と愛。
「戦神」の見所
赤神諒さんが描く”大友サーガ”第四弾
本ブログでも度々紹介させていただいている赤神諒さんの作品。私の大好きな作家さんの一人、そしてその筆頭となります。
そんな赤神諒さんのライフワークとなっている”大友サーガ”の第四弾となるのがこちらの「戦神」です。せっかくなので、ここで”大友サーガ”を振り返ってみましょう。※2022年12月現在で刊行されている作品を対象にしています。
① 大友二階崩れ:大友家のお家騒動「二階崩れの変」に巻き込まれる吉弘家の戦い
② 大友の聖将:「豊後のヘラクレス」と呼ばれた大友家家臣・天徳寺リイノの生涯
③ 大友落月記:小原鑑元と大友宗麟近習・吉弘賀兵衛が挑む政争
④ 戦神:立花道雪の苛烈な前半生
⑤ 妙麟:「九州のジャンヌ・ダルク」と呼ばれた女武将・妙林尼の活躍を描く
⑥ 立花三将伝:立花宗茂誕生前に起きた政争を巡る歴史エンターテイメント
赤神諒さんの特徴でもある、大友家を題材にした作品が多数刊行されており、本作品はその四弾目にあたる作品です。どの作品から読んでも影響はないですが、例えば立花道雪は「戦神」以外にも登場しているので、他の作品を読んでいるとより楽しみが増えるという傾向にあります。
第三弾の「大友落月記」では壮年の立花道雪が出ており、とてもアクの強く、見方によっては情の無い人物のように写ったりしますが、第四弾の「戦神」で立花道雪の前半生を読んでおくことで、その人物像に至った背景なんかを知り得ることが出来ます。
どの作品もあまりメジャーではない人物・出来事を題材としていますが、前提知識がなくても非常に没入できる作品です。歴史に忠実に描くところもあれば、赤神諒さんの視点で描く一種の虚構も織り混ぜ、どの作品もエンタメ要素満点です。苛烈な合戦・対決シーンもあれば、ドロドロの政争や駆け引き、ドキドキの謎解き。そして甘酸っぱい恋や家族・家臣への愛情。これらが絡み合って、とても完成度の高い作品が多いです。
そして各作品の大きな特徴と言えば、悲劇的な結末が多いという点。大友サーガに関わらず、あまりハッピーエンドで終わるという作品が多く無いのが赤神諒さんの作品の特徴。だからこそ強く印象に残る作品が多いのではないかと思います。
悲しみの中から立ち上がる人々、残された想いを次代に繋げる人々、そのような想いが描かれているために感動的な作品に仕上がっている傾向にあります。
忠義のために妻を討つ苛烈な人生
本作品の主人公である戸次鑑連、後半生の名を立花道雪。
その勇猛さで高い知名度を誇り、雷を切った「雷切」を号する刀を愛用した武将として有名です。娘には、戦国の世でも珍しい女城主となった一人娘の「立花誾千代」、その誾千代の夫となるのは、”剛勇鎮西一”と称された程の武を持つ「立花宗茂」。
話題性に富んだ人物であることは間違いなしですが、彼の人生の中でも大きな分岐点となるのが、大友家の政変である「二階崩れの変」に連なり、妻と妻の実家を討つことになった事件。
最愛の妻を討ってまで示した主君への忠義。彼の出家後の法号である「道雪」の名にも、苛烈なほどの忠義への想いが込められています。
「道に落ちた雪は消えるまで場所を変えない。武士も一度主君を得たならば、死ぬまで節を曲げず、尽くし抜くのが、武士の本懐である」
武士の本懐を遂げる本作のクライマックスは、涙無しには語れないというほどの感動的なシーンです。
次回作にも期待できる
本作品では、あくまで彼の前半生のみが描かれており、毛利家との戦いや、大友家衰退に繋がる島津家の戦いなどは描かれておりません。また、娘の誾千代や、婿の立花宗茂など、立花家の重要な役割を占める面々も登場していない。
赤神諒さんのライフワークである”大友サーガ”の重要人物である立花道雪の後半生を描かないなんてことはないでしょうから、きっと後半生を描いた作品も近々刊行されることでしょう。(という願望ですが。。)
強国との戦いや、娘・婿との関わり、雷切のエピソードなど、見所たっぷりになるはずの作品は今から待ち遠しいです。
本の基本情報
作品名:戦神
著者:赤神諒
出版社:角川春樹事務所
発売日:2019/4/11
ページ数:352ページ
まとめ
赤神諒さんの「戦神」を紹介させていただきました。
本記事もお読みいただき、ありがとうございました!
赤神諒さんの”大友サーガ”を描く作品は以下で紹介しているので、よろしければ併せてお読みください。
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