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【火定】奈良時代に発生したパンデミック 現代のコロナに通じる物語 

奈良時代に発生した天然痘の大流行を通じて、現代にも通じる人間の光と闇を描いた作品。ウイルスという見えない恐怖に晒されながら生き抜く、そんな今だからこそ読んでいただきたい一冊。

なごむ

こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!

本記事では一風変わったテーマで時代小説を描く、澤田瞳子さん著「火定」を紹介させていただきます。

新型コロナウイルスという恐怖に晒される現代にも通じる世界観が圧倒的なスケールで描かれている作品です。

目次

あらすじ

パンデミックによって浮かび上がる、人間の光と闇。
これほどの絶望に、人は立ち向かえるのか。

時は天平、若き官人である蜂田名代は、光明皇后の兄・藤原四子(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)によって設立された施薬院の仕事に嫌気が差していた。
ある日、同輩に連れられて出かけた新羅到来物の市で、房前の家令・猪名部諸男に出会う。施薬院への悪態をつき、医師への憎しみをあらわにする諸男に対して反感を持つ名代だったが、高熱に倒れた遣新羅使の男の面倒をみると連れ帰った行為に興味も抱く。
そんな中、施薬院では、ひどい高熱が数日続いたあと、突如熱が下がるという不思議な病が次々と発生。医師である綱手は首をかしげるが、施薬院から早く逃げ出したい名代は気にも留めない。だが、それこそが都を阿鼻叫喚の事態へと陥らせた、“疫神” 豌豆瘡(天然痘)の前兆だったのだ。
病の蔓延を食い止めようとする医師たちと、偽りの神を祀り上げて混乱に乗じる者たち――。疫病の流行、政治・医療不信、偽神による詐欺……絶望的な状況で露わになる人間の「業」を圧倒的筆力で描き切った歴史長編。

「火定」の見所

天平の疫病大流行を題材にしている

本作品では、奈良時代に発生したパンデミックである「天平の疫病大流行」を題材としております。

新型コロナウイルスが社会の様相を一変してしまう少し前、2017年に本作品は発売されているのですが、まるでこの世を予期していたかのようで、思わず手に取ってしまいました。

天平の疫病大流行は、735年から737年にかけて奈良時代の日本で発生した天然痘の流行。ある推計によれば、当時の日本の総人口の25–35パーセントにあたる、100万–150万人が感染により死亡したとされている。天然痘は735年に九州で発生したのち全国に広がり、首都である平城京でも大量の感染者を出した。737年6月には疫病の蔓延によって朝廷の政務が停止される事態となり、国政を担っていた藤原四兄弟も全員が感染によって病死した。天然痘の流行は738年1月までにほぼ終息したが、日本の政治と経済、および宗教に及ぼした影響は大きかった。
出典:Wikipediaより

生々しいまでの表現で描かれる混乱の世

本作品の見所の一つは、疫病の大流行による混乱を生き抜く人間の姿を生々しいまでのリアルで描き切っているスケール感にあります。

その澤田さんの世界観に引き込まれることで、天然痘に苦しむ人々の情景などが頭の中に鮮明に映し出されます。
正直、目を背けたくなるような生々しさもありますが、ここまで感じさせるのは澤田さんの素晴らしい表現力の賜物だと思い、次々にページをめくってしまうこと間違いなしです。

今も昔も変わらぬ人間の光と闇

対抗策も見えないまま京全体を蝕んでいく疫病を、必死で食い止めようとする医師たち。
疫病による混乱に乗じて、他者を貶めようとする人々。

そんな相反する人間の光と闇を描いている点も、本作品の見どころと思います。

どこから持ち込まれたかもわからず、対抗策もわからず、自分たちが危険に晒されながらも、1人でも多くの人々を救おうとする医師、そんな人の尊さを描いています。

反面、混乱に乗じて、ありもしない救いの神を祭り上げて金儲けに走る人々や、異国からやってきたものを諸悪の根源と定め、暴挙に及ぶ人々、そんな人間の闇も描かれています。

これらは決して過去に起きた物事だけではなく、現代にも通じる物事だと、そう感じさせてくれます。

まさに今の世だから読んでいただきたい、そんな作品になっております。

本の基本情報

作品名:火定
著者:澤田瞳子
出版社:PHP研究所
発売日:2017/11/21
ページ数:414ページ

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