「関ヶ原の戦い」の真実を解き明かす。将軍・家光から依頼を受けた立花宗茂が思い起こす”天下分け目の戦い”。戦国の香りが消え去った時代に語る、老将の言葉とは。
こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!
本記事では、羽島好之さんの「尚、赫々たれ 立花宗茂残照」を紹介させていただきます。
あらすじ
神君家康がいかにして「関ケ原」を勝ち抜いたのか、考えを聞かせてほしい―寛永八年、三代将軍家光に伺候した立花宗茂は、剣呑な諮問を受ける。
その真意はどこにあるのか、新たな大名取り潰しの意図が潜んでいるのではないか、下命に強い不安を募らせる。答え如何によっては、家光の勘気に触れる恐れもあった。
だが―先代秀忠の病いが篤くなり、親政に気持ちを昂らせる家光が待つ御座の間で、宗茂はある決意をもって語り始める。
やがて解き明かされる天下を分けた決戦の不可解さ、家康の深謀と西軍敗走の真相。
勝敗の鍵を握った大名が召し出され、決戦前夜の深い闇がいま明らかになろうとしていた…西国無双と呼ばれた男の老境の輝きを描き出し、関ケ原の新たな解釈に挑む渾身の歴史小説。
「尚、赫々たれ 立花宗茂残照」の見所
関ヶ原の真実を対話形式で解き明かす
関ヶ原の戦いを全く新しい視点から描く、というのがこちらの一冊。
家康を啓蒙する当代の将軍、徳川家光より「関ヶ原の真実を教えてほしい」と依頼を受けるところから物語が始まります。
敗北した西軍につき、一度は改易の憂き目にあいつつも大名に返り咲いた稀代の名将・立花宗茂。戦国の香りを知る彼に白羽の矢が立ち、生の声を知りたいという家光の気持ちが彼を動かします。
発言から失態を取り上げて、お家取りつぶしを狙うのではないかという懸念もありつつも、真の関ヶ原を知りたいと願う家光へ真摯に向き合う宗茂。本作品はありがちな合戦シーンはないながらも、白熱した対話の中に生まれる駆け引きが読者を引き込みます。
剛勇で知られた名将の新たな一面
立花宗茂といえば、その勇猛さから、豊臣秀吉より「剛勇鎮西一」と称されたほどの名将。文禄・慶長の役でも活躍し、知勇兼備の将としても有名です。
一方で、本作品で描かれる宗茂は、一線を退いて久しく、将軍の御伽衆として余生過ごす老将といった描かれ方。宗茂が描かれる作品は壮年期であることが多いと思うので、60を超えて酸いも甘いも知った老将としての描かれ方は新鮮味があります。
かの名将・立花道雪の養子になり、自身も名将としての誉れも高い。一方で、実父を「岩屋城の戦い」で亡くしたり、天下分け目の戦い「関ヶ原の戦い」では、敗者の西軍につきつつも、本戦には参戦できず、改易にあう。その後は、旧領に大名として復帰し、将軍の御伽衆となるなど、良くも悪くも戦国の儚さを知る人物が宗茂です。
加えて、武だけではなく文化人としても優れていた宗茂。茶や笛を嗜み、風流心にも溢れていた男です。戦国の儚さを知り、武も文も優れていた老将としての立花宗茂は、読者を新たな境地へ導いてくれます。
時代の転換点に生きた武将たちの生き様
あまりこういう心理状態を読んだことがないというのが率直な感想です
大阪の陣が終わり早15年。戦もなく平和な世で振る舞う、戦国の生き残りたちの処世術は見ものです。
戦国時代は、言ってしまえば”戦っているだけで良かった”。攻めれば土地を恩賞として与えることもできるし、何かしらの落ち度も出るから、理由をつけて罰してその土地を他の家臣に与えるなど。戦いがあれば、家臣の不満にも応えることができたというのが戦国。
一方で、平和な世になり戦いがなくなってしまうとそうはいきません。新たな土地を恩賞として与えることはできないし、そうそう罰することも難しくなる。ましてや、戦国時代の生き残りや、その子供などは新たな時代に順応しきるのが難しい。お家騒動を起こして改易された、福島家とかがその筆頭ですね。
戦うだけでなく、上手く家を立ち行かせる必要が出てきた時代に適応しようとする武士の生き様。これは戦国の終わりならでは、本作ならではの特徴なので、是非とも注目してお読みいただきたいです。
本の基本情報
作品名:尚、赫々たれ 立花宗茂残照
著者:羽島好之
出版社:早川書房
発売日:2022/10/25
ページ数:304ページ
まとめ
羽島好之さんの「尚、赫々たれ 立花宗茂残照」を紹介させていただきました。
新たな立花宗茂像との出会い、関ヶ原の戦いの新たな一面など、興味深い点が多い作品です。
本記事もお読みいただき、ありがとうございました!
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