若き日の経緯により日の目を見ない日々を送る山本勘助(四郎左)。苦難の末に出会った武田信玄の元、今までの鬱憤を晴らすかのように、軍配者として目覚ましい活躍を挙げる。富樫倫太郎さんが送る軍配者シリーズ第二弾。

こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!
本記事では富樫倫太郎さんの「信玄の軍配者」を紹介させていただきます。
あらすじ
日本最古の大学・足利学校で学問を修めた勘助は、その後、駿河国で囚われの身となったまま齢四十を超え、無為の時を過ごしていた。預かる軍配もなく、仕えるべき主君にも巡り合えず、焦燥だけがつのる日々…そんな折、武田信虎による実子・晴信(のちの信玄)暗殺計画に加担させられることになる。命を賭けた一世一代の大芝居、学友たちとの再会を経て、「あの男」がいよいよ歴史の表舞台へ―。
「信玄の軍配者」の見所
不遇の日々を過ごした男が成り上がるまで
まずこの作品の見所としては、過去のある出来事と容姿の醜さにより、士官先が決まらず不遇の日々を送る山本勘助(四郎左)が、決死の覚悟で勝負をかけて、武田信玄への士官を果たすという点。加えて、その後の眩しい活躍が描かれている点です。
前作「早雲の軍配者」でも、勘助は不遇の日々を送っており、自分の力を発揮できる場所を渇望していました。今作でも状況は変わらず、寿命が50年といわれる戦国の世で40歳に到達し、自身の運命の拙さを呪い悶々とした日々を送ります。
そんな勘助はある出来事をきっかけに、見事武田信玄への士官を果たし、直属の軍配者として大きな成果を上げていく、そんな苦労からの転身を描くサクセスストーリに心躍る一冊になっています。
やっと掴んだチャンスを離さないように死に物狂いになる姿、ようやく自身を認めてくれた主君との出会い、その主君に恩を返すべく躍起となる思い、それら全てに胸が打たれる感動的な一冊です。
前作からの・次作への繋がりにワクワクする
シリーズものの醍醐味ですが、やはり前作・次作との繋がりが保たれている点は読んでいて面白いポイントです。
前作「早雲の軍配者」では、北条家に仕える風魔小太郎に大きな借りがある山本勘助。この想いは大人になっても変わらず、常に風魔小太郎を気にかける素振りを見せます。
足利学校で共に学んだ宇佐美冬之助とは、戦場で相見えることを望んで彼の命を助ける動きをするなど、前作で描かれた少年時代の絆は大人になっても変わらないという関係性がとても美しく映ります。
加えて、見逃せないのは次作への繋がり。
山本勘助と言えば、第四次川中島の戦いでの戦いが印象的でしょう。
上杉家を打ち破るべく献策した「啄木鳥戦法」ですが、この策により武田軍が瓦解することになり、己の責任を恥じて壮絶な討死を遂げるという史実が語られています。
このような史実を知っていれば、本作品を読むにあたりどのような最期が描かれるのか、上杉軍の軍配者・宇佐美冬之助との関わりはどう描かれるのか、という点が気になっていくはずです。(私はそうでした)
結論としては、この戦いが描かれるのは「謙信の軍配者」になるのですが、次の作品への期待感が残るという意味で、良い構成なんじゃないかと思いました。
歴史の通説よりはエンタメ性に重きを置いた作品
シリーズを通して、歴史の通説をなぞるというよりは、エンタメ性に重きを置いた作品という印象を受けました。
これには賛否両論があると思いますが、個人的には面白かったというのが感想です。
通説では、風魔小太郎はあくまで北条お抱えの忍び集団の頭領であり軍配者ではなかったり、本作品の山本勘助は本当の山本勘助ではなく四郎左がなりすましているだけなどなど、、
歴史の通説を厳密になぞるわけではなく、個々の人物や関係を重視したエンタメ的な作品としては、非常に面白みのある一冊です。
本の基本情報
作品名:信玄の軍配者
著者:富樫倫太郎
出版社:中央公論新社
発売日:2014/2/22
ページ数:【上】258ページ【下】268ページ
まとめ
富樫倫太郎さんの「信玄の軍配者」を紹介させていただきました。
読む手が止まらなくなるワクワクする一冊です。
本記事もお読みいただき、ありがとうございました!
当シリーズはこちらでも記事を書いておりますので、お読みいただけると嬉しいです!




コメント