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【書評】毛利元就の一生を丁寧に描く【天命〜毛利元就武略十番勝負〜】

一国人領主に過ぎない男が、中国地方の雄となるまでの一生を描く。待ち受ける苦境を己の才覚で切り拓く姿に心打たれる一冊。

なごむ

こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!

本記事では、岩井三四二さんの「天命〜毛利元就武略十番勝負〜」を紹介させていただきます。

目次

あらすじ

大内、尼子の二大勢力に翻弄される弱小国人・毛利家の次男に生まれた元就。

兄を亡くし、図らずも大将となった元就は、いつ敵方に寝返るとも知れぬ家臣たちをまとめ、乱世を生き抜くために必死で足掻く。

自らも九死に一生を得て己の天命を悟った男は、幾度も哀しみから立ち上がり、武略に長けた逞しい武将となっていく。

毛利元就の戦いの生涯を描く傑作歴史小説。

「天命〜毛利元就武略十番勝負〜」の見所

毛利元就の一生を丁寧に描く

毛利元就と言えば、一国人に過ぎない弱小勢力から、大国である大内家・尼子家・大友家と渡り合い、一部は滅亡に追い込むまでの勢力を誇るまでに拡張させた希代の名将です。

巷では、知略・謀略に長けた策略家としてのイメージが強いでしょう。

そんな彼の一生を、500ページを超えるボリュームで、丁寧に描く一冊、それが「天命〜毛利元就武略十番勝負〜」です。

俗に言う「戦国時代」が始まる前の1497年に生を受け、戦国真っ只中の1571年まで生きた毛利元就。戦国の世としては長寿な彼は、波乱に満ちた一生を送ります。

現代の世で表すのであれば、市長のような位置づけの国人領主という立場であった毛利元就は、所領も兵力も少ない、どこにでもいる領主の一人でした。

彼を待ち受けるのは、大国大内家・尼子家の狭間でなんとか生き延びなければいけないという苦しい運命です。

苦しい運命に立ち向かい、最終的には大国の主となった毛利元就の生き様を知りたい方にはオススメな一冊です。

ドラマチックというよりは史実に忠実

独自性を交えながらドラマチックに描くような作品もある一方で、本作品はどちらかというと史実に忠実に、堅実な物語が描かれます。

悪く言えば”単調”、良く言えば”堅実”といったところでしょうか。

作品の流れとしては面白く、一国人に過ぎなく、力を増してからも国人の集合体のまとめ役程度で、確固たる戦力を持たないながらも、己の才覚で成り上がる姿は心を揺さぶられます。

反面、ターニングポイントなる戦いも少なく、一番有名な「厳島の戦い」も、ややあっさり書かれているのは少し残念。

また、謀将といったイメージが強い毛利元就ですが、そういった側面が色濃く出ていないため、毛利元就像がややボヤけてしまっている印象もあります。

トータルで、やや盛り上がりに欠けるため、好みは分かれるかもしれませんが、全体を通してみれば、読んで良かったと思える作品です。

毛利両川を始めとした三兄弟の個性

毛利元就を語る上で欠かせないのが、”三本の矢”ではないでしょうか。一本では容易く折れる矢も、三本まとめれば折れにくいという、結束を語ったエピソードしては有名な逸話です。

このエピソードの登場人物である、長男・隆元、次男・元春、三男・隆景、彼らは非常に優秀で、毛利元就存命時・没後も毛利家の発展に大きく寄与したと言われています。(隆元は元就存命時に没していますが)

本作品の中盤以降は、彼らも多く登場することとなり、三者三様の個性を魅せるところも見所の一つです。

大国毛利の長男として生まれながらも、才能の無さを自覚し苦悩する隆元。

勇猛果敢かつ武略に長じて、吉川家を継ぐこととなる元春。

三兄弟の中では一番優秀で、その才から大いに元就を助け、小早川家を継ぐ隆景。

彼らの活躍、個性を辿ることができるのも、この作品を読む意義と言えるでしょう。

本の基本情報

作品名:天命〜毛利元就武略十番勝負〜
著者:岩井三四二
出版社:光文社文庫
発売日:2022/4/12
ページ数:511ページ


まとめ

岩井三四二さんの「天命〜毛利元就武略十番勝負〜」を紹介させていただきました。

非常にボリュームがある作品ながら、序盤から終盤まで、非常に丁寧に描かれている一冊です。

本記事もお読みいただき、ありがとうございました!

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