若干22歳にて戦国の世に散った長宗我部信親。知勇兼備、容姿端麗、人望にも優れて将来を嘱望されていた若き武将。絶望の戦場に止まり、死を選んだ理由とは。赤神諒さんが描く”大友サーガ”第七弾・番外編。
こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!
本記事では、赤神諒さんの「友よ」を紹介させていただきます。
あらすじ
長宗我部信親――
敵も味方も魅了し、清冽に戦国を駆け抜けた若者がいた。
四国を統一しつつあった長宗我部元親。その嫡男・信親は、武勇の誉れ高く、人望も厚く、将来を嘱望されていたが、22歳の時に若くして、島津家を相手にした戸次川の戦いで命を落とす。彼はなぜ、“必敗必死”の戦場にとどまり、その地で死ななければならなかったのか。
家臣や領民、そして戦った敵までをも魅了し、「友」として取り込んでいく熱い生きざまを、堂々たる筆致で描く、心を震わす青春歴史群像小説。
「友よ」の見所
将来を嘱望されながらも若干22歳で散った信親の一生
本作品の主人公となる長宗我部信親。一時は四国統一を成し遂げるまでに成り上がり、「土佐出来人」と呼ばれた長宗我部元親の嫡男に当たります。
戦国最盛期に活躍した長宗我部元親はネームバリューもトップクラス。小説やゲームの主人公に取り上げられることもあり、誰もが知る戦国武将でしょう。
次点で有名なのは、元親の四男にあたり、関ヶ原の戦い・大阪の陣にも参戦した長宗我部盛親ではないでしょうか。
元親の長男にあたり、智勇ともに優れ、容姿も堪能、礼儀にも通じ、将来も嘱望されていた信親。そこまで有名ではないのは、若干22歳で戦国の世に没したことが原因かもしれません。
父の元親が奮闘する四国統一戦から、彼が没することとなる戸次川の戦いまでの、短くも太い清らかな一生を描いているのがこちらの作品。赤神諒さんらしさ全開の面白い作品です。
戸次川の戦いという、絶望的なクライマックスが待っていることが分かっている中、どういうエンディングに繋げていくのかというドキドキ感が見所の一つ。
鮮やかな信親の姿を見ていると、死んでほしくないと願いながらもドンドンと終末に近づいていくもどかしさ。
史実と虚構を織り交ぜた展開、淡い恋模様、悲劇的な結末など、作品にのめり込むこと間違いなしの一冊になっています。
タイトル「友よ」に込められた意味を追う
本書の導入にも使われ、謎の一つとして掲げられているのが、「何故信親は撤退しなかったのか」という点。
信親が没した島津家との戦い「戸次川の戦い」は、島津方の一方的な勝利に終わり、豊臣方の主将である仙石秀久は逃亡、主力の十河存保や長宗我部信親は打ち取られ、配下の兵たちも多く討たれた一戦として伝えられています。
長宗我部の停止を振り切り進撃してしまった仙石秀久や、かつての敵であったが同軍していた他の兵を見捨てずに戦いつづけた信親。知勇兼備の将と、配下の兵も強力だったので、撤退することもできたはず。そんな中でも何故撤退しないで戦い抜いたのか。そして死を選んだのか。
それを問いかけるのが本書の序章であり、父・元親の懐刀の谷忠兵衛が「どうにも、わからぬ」と嘆いた謎。
それこそが、タイトルの「友よ」に込められていると、私は思います。
家族でも敵に分かれて戦い合う戦国の世。そんな世の中を変えるべく、平和な世を願い戦い抜く信親。彼の人となりに魅せられた人々は、彼を慕い、彼の周りに集まり、やがて大きな力を蓄えていく。昨日までの敵を「友」と呼ぶ信親の清々しい人柄。
他人を大切にし、家臣・領民・敵将を分け隔てなく「友」と呼び、その「友」を守るために残された選択肢。それが、絶体絶命の戦場に残り、多くの味方を生き延びさせたという真実ではないでしょうか。
人と人との距離が遠くなっている現代を生きる私にとっては、とても鮮やかに映る生き様でした。
“大友サーガ・第七段番外編”と銘打った作品
赤神諒さんと言えば、大友家に関わる人々や出来事を取り上げた作品を描く、”大友サーガ”をライフワークとしていることが有名です。
本作品は、大友家が活躍する九州のお隣の四国が舞台に繰り広げられる物語なので、直接的な関わりはほとんどありません。そのため、”番外編”と銘打っているのでしょう。
とはいえ、戸次川の戦いに至る過程には大友家関連の話題もチラホラ出てくる感じ。
あの「妙林尼」もちょこっと登場しているので、大友サーガファンには見逃せない展開でしょう。
他の”大友サーガ”で戸次川の戦いを描いている作品はなかったと思うので、大友家サイドからの目線でもう一度読むことは出来ないながらも、今後も大友家以外から大友家を描くということがあれば、それも一つの面白さになるのかなと思った次第です。
本の基本情報
作品名:友よ
著者:赤神諒
出版社:PHP研究所
発売日:2022/12/8
ページ数:424ページ
まとめ
赤神諒さんの「友よ」を紹介させていただきました。
本記事もお読みいただき、ありがとうございました!
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