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【書評】哀愁漂う名門の生き様【乱世を看取った男 山名豊国】

かつては栄華を誇った名門、山名家の跡取りとなる山名豊国。彼を待ち受けていたのは、衰退の一途を辿る自家と、家臣の裏切り、強国からの魔の手。戦国の世で、力無きものが生き延びる姿を描く一冊。

なごむ

こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!

本記事では、吉川永青さんの「乱世を看取った男 山名豊国」を紹介させていただきます。

目次

あらすじ

応仁の乱を起こした名家・山名を継いだ武将、豊国。幾度のもの変心を経ても、なぜ家康は豊国を評価したのか。大名を捨てながらも、戦国を生き延びた「宿将」の生涯。


1548年(天正17年)に山名豊定の次男として生まれた豊国。かつて日本の多くの荘園を経営し、「六文の一殿」と呼ばれた名家・山名は、戦国の荒波の中で消耗し、山名豊国は厳しい領地経営を強いられる。


尼子、毛利、織田と強大な勢力に挟まれた豊国は、織田信長の指し示す「戦国の終わった世」の未来に憧れるが、
生き延びるために心ならずも多くの裏切りを行う。


変心の中で捨てることのなかった豊国の本心とは?未来が見えない時代にも通じる豊国の生き様を描く歴史巨編。

「乱世を看取った男 山名豊国」の見所

滅多に取り上げられることのない武将を描く

本書の主人公である山名豊国ですが、時代小説の中では非常にマイナーな、主人公として取り上げられることがない武将です。

まずは、山名豊国の基本情報についておさらいしてみます。

✔︎ 生年は1548年、享年は1626年
✔︎ 但馬・因幡国を拠点とする
✔︎ 「応仁の乱」の西軍総大将である「山名宗全」の子孫
✔︎ ”六分一殿”と称された名門の跡取り ※山名家は、日本の領国の六分の一を保有していたことから”六分一殿”と呼ばれた
✔︎ 山名家を滅亡させた最後の当主

おおよそこのような武将です。

生年は1548年ということから、戦国時代真っ只中で壮年時代を生き抜いた、典型的な戦国武将と言えるでしょう。

そんな山名豊国の、後世で描かれるイメージは基本的に悪いです。

過去には日本の六分の一の領地を保有し、応仁の乱の西軍総大将を排出したほどの名門の跡取りながら、お家を滅亡させたというイメージ。

また、大国との間で生き抜く必要性に駆られたためではあるが、毛利家や織田家の間を転々とする変わり身。

極め付けは、滅亡のきっかけとなった鳥取城の戦いでは、単身降伏をし助命されるが、家臣たちは過酷な籠城戦の挙句、悲惨な末路を辿って落城するという始末。

暗愚な武将というイメージが強い山名豊国ですが、決して愚かなだけではなかったというイメージに作り替えてくれる、そんな一冊が本書となります。

毛利家・織田家の二大強国に挟まれながら生き抜く

山名豊国が壮年を過ごした時期は、毛利及び織田家の最盛期と重なっており、所領の接する山名家にとっては最悪のタイミングとなりました。

なんとか家を保とうと腐心する豊国は、プライドを捨てて、時に毛利に時に織田につくというギリギリの外交で生き延びる道を模索します。

本書では、自身の評判を省みず、家を家臣を守ろうとする豊国の一面を垣間見ることができ、ただ裏切りを行うだけの暗愚な武将というイメージとは違った姿に出会えます。

結果的に家は滅亡することとなりますが、豊国は豊臣秀吉の御伽衆となり、子孫は徳川幕府の旗本になるなど、生き残りをかける外交としては正しい眼を持っているという姿が描かれています。

名門が衰退に近づく哀愁

かつては”六分一殿”と呼ばれ、最も大きな権力を持つ家の一つであった山名家。

豊国がその名門を継いだ時には、その面影を残すことなく衰退の一途を辿っていました。

困難な状況ながらも苦境を覆し、名門復興を悲願とする豊国。

そこに立ちはだかるのは、家臣の裏切りや、実権を奪われてお飾りとなった家督の座。

そして極め付けは大国毛利と織田による侵攻。

悲願を成し遂げるという気持ちを持ちつつも、時代の流れに取り残されていく自家や家臣を守ろうというギャップに悩まされ、その姿からは哀愁が漂ってきます。

鮮やかな勝者の物語や、美しい散り花を描く敗者の物語ではない、戦国のリアルが描かれています。

本の基本情報

作品名:乱世を看取った男 山名豊国
著者:吉川永青
出版社:角川春樹事務所
発売日:2021/9/15
ページ数:344ページ

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まとめ

本記事では、吉川永青さんの「乱世を看取った男 山名豊国」を紹介させていただきました。

敗者が何とか生き残ろうとする姿が印象的な一冊です。

本記事もお読みいただき、ありがとうございました!!

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