自国を守るため、大国との戦いに身を投じた奇跡の女武将・鶴姫の活躍を描く。戦に青春を捧げながらも恋を望み、望んだ運命が導く悲恋。涙を誘う感動の一冊。
こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!
本記事では赤神諒さんの「空貝」を紹介させていただきます。
あらすじ
伝説的女武将・鶴姫は、巫女であり総司令官であった。村上水軍を率いて西国最強の水軍を迎え撃つ──数奇な運命を描く長編歴史小説!
1541年6月、西の大国・大内氏の水軍が大三島(おおみしま)に大挙襲来する。
迎え撃つ三島(さんとう)村上水軍の奇襲作戦は失敗し、総司令官である陣代の大祝(おおほうり)安房が戦死。実はそれは、安房の若き軍師・越智(おち)安成による大祝家への復讐の始まりだった。
大祝鶴姫は平和な今治で巫女として神事に専念していたが、最愛の兄・安房戦死の報に接し、「大内を打倒し仇を討つまでは女を捨て、男として生きる」と宣言する。
陣代となった鶴姫は安成と激しく衝突しながらもその献策を採用。鶴姫の天賦の軍才と安成の奇策によって勝利を収める。
安成はなおも鶴姫謀殺と三島水軍の壊滅を企むが、鶴姫から危地に陥った己の命を逆に救われるのだった……。
「空貝」の見所
鶴姫伝説をベースとした作品
本作品の主人公「鶴姫」について簡単に紹介させていただきます。
✔︎ 戦国時代に活躍した女武将「大祝鶴姫」
✔︎ 瀬戸内海に浮かぶ「大三島」を本拠として水軍を率いて大内氏を撃退
✔︎ 日本に現存する唯一の女性用の鎧「紺糸裾素懸威胴丸」を着用していたとされる
歴史ファンではない限り、耳にしたことが少ないであろう人物です。
かくいう私も忘れていたぐらいで、そういえば「戦国BASARA」というゲームに出てきたなと、本を読んで思い出した次第です。
戦国の世には珍しい女武将の一人で、当時大国と言われていた大内氏の水軍を撃破という偉業を誇っています。しかも、彼女は16歳から戦場に出始めて陣頭にて指揮を行ったんだとか。
本作品では、彼女が16歳で戦場に出始めてから大三島を守るまでの戦いを描いています。
このような若い女武将が大国を相手に海上で戦うというロマン溢れる作品になっています。
叶わぬ恋が涙を誘う
若き女武将が自国を守るために奮闘する戦いに加え、青春時代を生きる若き女性の恋愛も大きな見どころになっています。
大祝家という神社の宮司を務める家の娘として生まれ、半神として崇められる鶴姫。
加えて、大三島を守る将としての顔も持ちます。
そんな高貴な身分ながらも、軍師を務める越智安成という家臣に恋をしてしまいます。
身分の差、大国からの侵略、そして越智安成に秘められた秘密。
これらの要素が恋を阻み、読者をヤキモキさせる展開になっています。
このような、時代小説に甘酸っぱい恋愛要素が盛り込まれていることは珍しい印象で、私としても新鮮だったのですがこれもまた良い要素だなと感じました。
若干ネタバレにはなりますが、帯に書いてあるようにこの恋は「悲恋」に終わります。
私も帯を読んでから本を読み進めたので、いずれは良くない方向に行くのだなと感じながら鶴姫の姿を見ているのが苦しいというジレンマにハマりました。(実際の姿を見ていたかのような描きっぷりでスイマセン笑)
空貝に込められた意味
本作品の主題ともなっている「空貝(うつせかい)」は、鶴姫の辞世の句をモチーフにしていると考えられます。
わが恋は 三島の浦の うつせ貝 むなしくなりて 名をぞわづらふ
こちらは、越智安成に恋をした鶴姫の心情を表していると考えられ、「私の恋は、三島の浜辺の空貝のよう。虚しくなって、越智安成の名前を思い浮かべるだけで辛い」という意味と解釈できます。
空貝とは、肉が抜けて空になった貝のことを指しますので、越智安成がいなくなった空っぽの自分自身を指しているのでしょう。
このように辞世の句に語られている「空貝」ですが、本作品の中では多くの物事の象徴として語られているため、自分なりの「空貝」の意味を考えるというのが情緒的で面白い読み方だと思いました。
また、本作品の面白い一説を紹介します。
いや、いつか太平の世が来れば、どこぞの物好きが恋物語に仕立てあげるやも知れぬぞ。たとえば、「空蝉」なるぬ「空貝」なぞと名付けてな。
本作品 p408
こちらは越智安成が作品中で語る一説ですが、この「空貝」を読むことはあり得ない越智安成が本作品を語るという面白いシーンになっています。
「物語の自己言及性」という手法のようで、赤神諒さんがちょっとした遊びで入れたんだとか。
面白い試みだなと感心しました。
本の基本情報
作品名:空貝
著者:赤神諒
出版社:講談社
発売日:2022/1/14
ページ数:448ページ
まとめ
赤神諒さんの「空貝」を紹介させていただきました。
他赤神さん作品の例に漏れず、感動的な一冊となっているので大変オススメです!
本記事もお読みいただき、ありがとうございました!!
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