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【書評】新たな「今川氏真」に出会える一冊【氏真、寂たり】

名門・今川家を崩壊に導き、暗愚の将との呼び声が高い「今川氏真」。本当の彼の姿とは何だったのか。歴史に残る敗戦を乗り越え、必死に生き抜き守ろうとした彼の想いを描く一冊。

なごむ

こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!

本記事では、秋山香乃さんの「氏真、寂たり」を紹介させていただきます。

目次

あらすじ

桶狭間の戦いで留守将として駿府にとどまっていた今川義元の嫡男・氏真は、父の死と自軍の敗退を知る。

敵の織田信長と同盟を結んだ徳川家康の裏切り、国人領主たちの離反。

ついに武田、徳川の駿河侵攻により今川家は滅亡、氏真は流転の日々を送る。

六年後、家康の仲介で武田との戦に加わるため、氏真は仇敵信長に対峙する――。

駿河の名家・今川家を滅ぼし「戦国一の愚将」と称される氏真。

その人物像を覆す、戦国史を新たな視点で捉えた歴史長篇。

「氏真、寂たり」の見所

新たな「今川氏真」像に出会える一冊

本書の目玉は、新たな「今川氏真」像に出会えるという点に尽きる。

そもそも題材として取り上げられることは少ない今川氏真だが、本書では幼き日から没するまでの一生が描かれているため、今川氏真を知りたいなら、まずはこの一冊を、という作品になる。

そもそも今川氏真とはどういった人物なのか。ザックリと評すると以下となると思う。

✔︎ 「海道一の弓取り」と称された今川義元の嫡男
✔︎ 「天下一苗字」の待遇を受け、足利一門に列する名家の後継者
✔︎ 和歌・蹴鞠に通じた戦国きっての文化人
✔︎ 今川家の滅亡を招く

同家の子孫以外、「今川」を名乗ることを禁じる「天下一苗字」という待遇を受け、「将軍が絶えれば吉良が継ぎ、吉良が絶えれば今川が継ぐ」とまで言われ、場合によっては将軍職に着く可能性を許された名門の後継者が今川氏真。

今川家最大の版図を広げ「海道一の弓取り」とも評された名将「今川義元」を父に持つ、歴とした名門の嫡男にあたる人物。

個人としては、和歌・蹴鞠などの文化に強く精通し、今川家滅亡後は文化人として公家との交流を盛んに行っていた。

ザックリと評すると上記となるが、今川家を滅亡に追いやった張本人ということから、世間のイメージは悪いに違いない。

かくいう私も「雅な文化に溺れた暗愚な将」という印象を強く抱いており、多くの方が抱いているイメージと大きく差はないだろう。

本作では、そんな暗愚な将を通説とは異なった見方で描いている。

この一冊を読むことによって、彼への印象がガラッと変わる、そんな一冊に仕上がっている。

新たな今川氏真像に出会いたい方にはオススメな一冊。

今川家滅亡までの道筋を辿る

恥ずかしながら今川家滅亡までの詳細を知らなかった私にとっては勉強になる一冊だった。

そもそも滅亡のきっかけになったのは、1560年に起きた「桶狭間の戦い」による。

これは誰でも知っている戦であり、この戦で今川義元が討ち取られたことで崩壊への一途を辿り、すぐに今川家滅亡に至ったと考えていた。

実際はそうではなくて、1560年の「桶狭間の戦い」から1569年の「駿河侵攻」までの9年間は今川氏真の統治する時代が続いていたようだ。

今川家最大の版図を築くことになった父が討ち取られるという大混乱の状況ながらも、9年間にわたり国を存続させた手腕は、それなりに評価できるのでは、と本作品を読んで感じることとなった。

とてつもなく困難な状況ながらも、何とか国を存続させようとする意志を垣間見る面白さが、この一冊には秘められている。

本の基本情報

作品名:氏真、寂たり
著者:秋山香乃
出版社:徳間文庫
発売日:2022/1/12
ページ数:512ページ

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まとめ

秋山香乃さんの「氏真、寂たり」を紹介させていただきました。

新たな今川氏真像に出会えるオススメの一冊です。

本記事もお読みいただき、ありがとうございました!

別の著者ではありますが、本作品の主人公の父にあたる「今川義元」の新たな一面を描いたこちらの作品もオススメです。よろしければお読みください!

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