敗北=終焉ではない。敗北の中に光明を見出し、誇りを捨てなかった源氏の人々。源義朝・常盤御前など、源氏の主題としては語れにくい面々を取り扱った短編集。敗北・逃走というテーマを元に描かれた、面白みのある一冊。

こんにちは!
歴史小説大好きななごむです!
本記事では、武内涼さん著の「源氏の白旗 落人たちの戦」を紹介させていただきます!!
あらすじ
最後の戦い、してみせん――
源義朝、常盤御前、義仲、義経、静御前…
奔る源氏たちの敗れざる魂を描く
慟哭の源平合戦小説!
『奔る義朝 源 義朝』―平治の乱で平清盛に敗れ、東国からの再起を誓うが――
『雪の坂 常盤御前』―義朝との間に生まれた三人の子を連れ雪の坂を……。
『歌う老将 源 頼政』―歌詠みの老将が以仁王とともに挙兵した意外な理由とは――
『落日の木曾殿 源 義仲』―落日の“旭将軍”の前に逃がしたはずの女戦士・巴が――。
『しずのおだまき 静御前』―義経の子を宿した身で頼朝に舞うことを強いられ……。
「敗北は終わりではない!敗れても信念を貫いた人たちの物語は、
勇気と希望を与えてくれる。本書のテーマは暗い時代の光明になるだろう」
――末國善己(文芸評論家)
「源氏の白旗 落人たちの戦」の見所
“源氏“として取り扱われる人々からは珍しい面々を起用
“源氏“と言えば、やはり源頼朝や源義経が取り扱われることが多いですよね。
この時代の作品では、基本的にこの両名が中心に描かれたり、源氏を主役としていない作品でも登場することが多いと思います。
私が読んだことある作品でも、例えば司馬遼太郎さんの「義経」であったり、やはり源氏=源頼朝・源義経というイメージは強いかと思います。
そんな中でも、本作品で中心として扱われる面々は、頼朝の父・源義朝や、その側室であり源義経の母・常盤御前、同じ源氏でも頼朝などとは異なる嫡流の摂津源氏の首領・源頼政、頼朝や義経の従兄弟・源義仲、義経の妻・静御前。
このように、頼朝や義経ではなく、両名を取り巻く人々にフォーカスして描き上げたのが当作品です。
THE・源氏と言われる両名以外を取り扱った作品はそんなに多くはないと思うので、より新鮮味を感じながら読むことができます。
敗北・逃亡を主題として描く
武士にとって、敗北とは即ち、死です。
惨めな姿を晒すぐらいであれば、潔く自決するなど、そんな風潮もあった世の中。
そんな中で負けて・逃げても、それぞれの目的のために、誇りを失わなかった人々の矜持が描かれています。
この一冊では、源氏の人々が汚名を晒そうとも貫いた誇りを感じ取ることができます。
ある意味、源頼朝や義経は、勝ちの中にいた源氏であり、華やかな一面がクローズアップされがちです。
ただ、その基盤を作った人々(=本作の主役たち)には、敗者の歴史がある、そこを捉えた一冊になっています。
源氏作品への導入として最適
これは完全に個人的な感想になるのですが、多様な源氏サイドの人々の物語が載せられていることで、もっと深く知りたいと思える一冊になっています。
5名が短編として載せられているので、かなりテンポは良く、読みやすい作品となっていることが特徴。
この作品はこの作品として良いのですが、例えば源義仲の一生をもっと深く知っておきたいなとか、そういう興味が湧いてくるので、個人を描き切った作品を読んでみたいなと思いました。
私の歴史小説の読み方として、誰かを主役に捉えた一冊を読み、その作品に出てくる人々をメインで取り扱った作品に派生して読む、という読み方・作品の選び方をすることが多いです。
そうすることによって、脇役で描かれている作品では見えなかった一面が見えてきたり、(もちろんですが)作者によって変わる人物像に出会えたり。
そんな感じで、色々な観点から一人の人物と接することができるので、より深く掘り下げることができて、個人的には良い読み方かなと思ってます。
ということで、本作品では、サラッとテンポよく触れられるという意味では非常に良書で、さらに深掘りしていきたいなと思うのには最適な一冊になっています。
本の基本情報
作品名:源氏の白旗 落人たちの戦
著者:武内涼
出版社:実業之日本社
発売日:2021/7/8
ページ数:272ページ
まとめ
本記事では、武内涼さん著の「源氏の白旗 落人たちの戦」を紹介させていただきました!!
主役としては取り扱われにくい人々を主役にし、敗北・逃走というネガティブなイメージの中で誇りや想いを描くというユニークかつ面白みのある一冊になっています。
源氏ファンとしては是非とも読んでいただきたい一冊だと思いますので、大変オススメです!!
本記事もお読みいただき、ありがとうございました!
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